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INTERVIEW今、注目のウェルリビングの実践者
2023.12.13

街のクリーニング屋さんが、
自然派クリーニング店へ進化!
ブランド再構築の先に描く未来

毛利明光さん Akimitsu Mouri
株式会社アルサホールディングス 執行役員
毛利明光さん Akimitsu Mouri
株式会社アルサホールディングス 執行役員

「いわゆる街のクリーニング屋さん」から一転、「環境にも肌にも、衣類にもやさしい自然派クリーニング」をコンセプトにリブランディングを行い、客層が変わり、売り上げもアップしたSolairo Cleaning Factory。その仕掛け人、株式会社アルサホールディングス執行役員である毛利明光さんに、リブランディングまでの経緯と現在の取り組みについて取材した。

「いわゆる街のクリーニング屋さん」から一転、「環境にも肌にも、衣類にもやさしい自然派クリーニング」をコンセプトにリブランディングを行い、客層が変わり、売り上げもアップしたSolairo Cleaning Factory。その仕掛け人、株式会社アルサホールディングス執行役員である毛利明光さんに、リブランディングまでの経緯と現在の取り組みについて取材した。

コロナ禍で投資案件凍結。
リブランディングの
方向性から見直した

Solairo Cleaning Factoryを手掛けるアルサグループは「いつも快適の真ん中に」をコンセプトに掲げ、リネンサプライを中心に扱う会社である。ホテルや病院へのリネンサービス、飲食店で出すおしぼりのレンタル事業のほか、ミネラルウォーターの宅配事業なども扱う、20社ほどで構成された多角経営のグループ企業だ。

アルサグループでは、「いわゆる街のクリーニング屋さん」を10年ほど前にグループ化。コロナ禍の前にリブランディングを計画していた。しかし、いざ動き出そうとした矢先に、新型コロナウイルス感染症が流行。店舗と工場を含め数千万円規模の投資を予定していたリブランディング計画は凍結した。

外出する人が一気に減り、売り上げが半減。事業撤退という選択肢もちらつく中、毛利さんはリブランディングの方向性を転換し、社内で再提案を進める。

「コロナウイルス感染症が流行する前に考えていたリブランディングの方向性は、ハイブランド化。少し高めでかっこよく、きれいなお店にし、価格帯を上げることによる売り上げ増を狙うというものでした。」と、毛利さんは当時を振り返る。

しかし、世の中の価値観が急激に変わっていったこの時期に、本当にすべきことは何なのかをすごく考えさせられたと、毛利さんはいう。

リブランディングで誕生したSolairo Cleaning Factoryの看板。ロゴの由来は、「空色のように混じりっけない自然派クリーニング」

リブランディングで
世界一エシカルな
クリーニング店を目指す

「コロナ禍が落ち着いた後、継続的に問題になることは何だろう、これからのクリーニングはどんなことが求められていくのだろうということを、広い視点で工場長と話し合いました。」

コロナ禍をきっかけに、これまでの資本主義一辺倒の価値観が大きく揺らいだ。人間の無力さを感じ、自然や生態系、地球環境へ関心を寄せる人も増えたのではないだろうか。

そんな折、より広い視点で世の中を眺め始めた毛利さんは、たまたま家族に誘われて訪れた環境活動家の講演会で衝撃を受けることになる。

「海水温の上昇によるサンゴの死滅や、海洋プラスチックによる海洋生物・人体への健康リスク。異常気象による洪水、水資源不足や食糧不足に陥るリスク、農作物への影響など、地球環境の悪化が、人々の生活を脅かすようになるまで、もう待ったなしのところにまできているという事実をバンバンと突きつけられて。その時までは、環境問題って誰かがどうにかしてくれるものというような認識だったのですが、とんでもないな、と。」

子どもたちと講演を聞いていて、この子たちの未来のためには、自分も今すぐ動き出さなくてはいけないと強く感じた。

「ボランティアで何かをやることも考えたのですが、やはり日中過ごしている時間が一番長いのは仕事の時間なので、そこで事を興すのが一番のインパクトになると考えました。」

未来の子どもたちに誇れる仕事を。そうして生まれたのが、「全てのサービスをサステナブルに」というスローガンのもと、環境保全へ取り組むクリーニング店を目指したSolairo Cleaning Factoryだった。

エシカルな取り組みをしっかりと説明しながら接客を行うこちらの店員は、元着物販売員。リニューアルを機に採用となった彼女は、Solairo Cleaning Factoryの理念の伝道師の一人として活躍している

石油由来成分を使わない
100%植物性の
オリジナル洗剤を開発

その中身として、毛利さんたちが最初に手掛けたのは、毎日使う洗剤だった。海洋汚染、工業排水の問題へとつながる洗剤の中身を可能な限り自然のものへ。開発期間を1年ほどかけ、洗剤メーカーと洗浄テストを重ねて「100%植物性の洗剤」が出来上がった。

「洗浄力も十分ある、すごく良いものができました」と、毛利さんは誇らし気な笑顔を見せる。

植物性の洗剤は、多くのクリーニング店の使用する安価な石油系合成界面活性剤と比べると、どうしてもコストが上がってしまう。そのため、Solario Cleaning Factoryでは、可能な限りコスト増を吸収できる仕組みを考え、お客さんへ提供する値段が上がりすぎないよう努力を重ねているという。

「最初の2店舗のオープンのタイミングで、リブランディング未着手の店舗も含めて、工場で使用する洗剤を全て切り換えました。それにより、工場排水の問題をより改善できるのと、洗剤の大量購入が可能になるのでコストを下げることができます。」

「また、家庭排水の改善も視野に入れ、ご家庭でも使用してもらえるようSolairoの店舗では洗剤の販売もはじめました。」

プラスチック容器の削減のことも考えて、店舗での販売方法は量り売りにすることにした。

「ボトル入り洗剤を販売しようとすると、実は原価の半分ぐらいはボトル代になるんです。容れ物を持ってきてもらって、工場で使用している洗剤を店舗で量り売りにすることで、一般の方々にも500mlを440円程度で提供できるようになりました。プラスチックゴミも出さなくて済み、価格も半分以下で提供できる、とても良い仕組みを作ることができました。」

店内では、100%植物性(ココナッツ由来)のオリジナル洗たく洗剤のほか、消臭ミストや柔軟剤、リネンウォーターも販売している。いずれも、ボトルで購入することも、量り売りで購入することもできるようになっている

続いて生み出したのは
Yシャツクリーニング用
段ボールハンガー

洗剤の次に毛利さんたちが手掛けたのは、プラスチックハンガーからの脱却だった。プラスチックは石油から作られているため、燃やすとCO2等の温室効果ガスが排出される。また、海へ流れ出たプラスチックがクジラやウミガメ、魚の体内から出てきているなど、海洋環境への悪影響が報告されている。

クリーニング業界では大量のプラスチックハンガーが使用され、次々に廃棄されているのが現状だ。

「福岡県リサイクル総合研究事業化センター(以下、リ総研)が、段ボールの会社でハンガーを作れるかもしれないと、マッチングしてくれて。すぐにご相談に行き開発をはじめました。」と、毛利さん。

ハンガーの形はすぐにできたが、問題は強度だった。衣類を運ぶ機械の幅の関係で2センチという上限があり、また、ハンガーが運搬レーンをうまく滑り降りていくための工夫も必要だった。負荷がかかると、ネックの部分から折れていくため、ネック部分だけを取り替えることができる仕様にもこだわった。

「いろいろと考え、試しているうちに、やはり1年近く開発にかかりました。」

段ボールハンガーは店舗で回収し、リユースをして、ボロボロになったらリサイクルに出す。段ボール自体も、ほぼ100%のリサイクル素材のため、無駄がない仕組みが出来上がり、年間およそ420kgのプラスチックハンガーの削減に成功した。徹底的に自然にやさしいこの「段ボール製ワイシャツ用ハンガー」は、2023年グッドデザイン賞を受賞した。

写真上:試行錯誤を繰り返し、作られた段ボールハンガーの試作品。奥から順に進化を重ね、現在の完成形(写真手前)までたどり着いた
写真下:クリーニング工場で実際に使われている様子。こちらのレーンを滑らかに滑り降りることのできる仕様にするまでが、非常に大変だったと工場長は語る

毎月数百名の新規顧客。
客層のボリュームゾーンも
50代から20代へ変化した

2021年10月に最初の2店舗をオープンしたSolairo Cleaning Factoryへのブランド転換から、およそ2年。リブランディング店舗は4店舗に増え、毎月数百名の新規顧客を獲得している成長ぶりだ。

さらに、「いわゆる街のクリーニング店」だった頃と比べ、客層が大きく変化した。以前は50代が中心だった客層が、今では20代がボリュームゾーンになり、全体の30%を占めている。環境にやさしい自然派クリーニングのコンセプトは20代の客層の心を掴んだのだ。

「驚いたのが洗剤の測り売りで、圧倒的に女性向けだと思って始めたのですが、蓋を開けてみたら、購入層は単身で暮らしている若い男性の方がとても多くて。また、わざわざ車で、隣りの区や隣りの県からも来てくださるお客さんが増えているということにも驚いています。」と、毛利さん。

これまで社内で行ってきた、クリーニング店利用に関する調査によると、通常は最寄りの店舗を選ぶというのが圧倒的1位だった。ところが、Solario Cleaning Factoryへは、遠くから訪れる人も増えている。最近は、肌の弱い人たちの間でもクチコミで広がっているのだという。

「環境にいいものは、結果的に人にも優しかったりするんですよね。」

店内では、業務用としては日本初となる「ビニールカバー回収&リサイクル」を実施している。回収したビニールは、マテリアルリサイクルにより、ビニールへと再製される。回収に協力してくれる顧客も多いのだという

クリーニング事業から
会社全体の変革へ。
3%が変われば組織が変わる

クリーニング事業で手応えを得た毛利さんは、ゆくゆくは会社全体で環境保全への取り組みを行っていきたいと考えている。アルサグループには、B to Cの事業としてクリーニング事業とミネラルウォーター宅配事業があるが、主力のリネンサービスなどのB to B事業ではお客さんが2万社あるため、その先のユーザーは何百万人、何千万人という数になる。

「今はまだ、クリーニング事業内の数店舗での改革ですが、全社で扱うリネンやおしぼりに至るまで、環境に配慮した事業にシフトしていくことができたら、ものすごく大きなインパクトになると思います。」

「ビジネス界では、『3%が変われば、組織が変わる』といわれています。なので、まずは会社の中でその3%を作っていきたい。会社として環境経営にシフトしていくために、この5月にサステナビリティ推進室を作りました。」と話す毛利さんは、次なる広がりに向けてさっそく動きはじめている。

サステナビリティ推進室では、ビーチクリーニングのボランティア活動などの取り組みを行っている。アルサグループには今、従業員1,000人ほどが在籍する。そのうち30人が参加してくれて、理念に共感してくれたら3%になる。

「まずは3%を変えるところから。でも、こんなスピード感ではだめだとも感じています。気候変動をはじめとした地球環境の変化はすでに待ったなしの状態です。もっと早く、もっとスケールを大きく環境保全に乗り出していかないと、間に合わない。」

毛利さんは、強い危機感と使命感の中で改革を進めている。毛利さんが見ているのは、未来の子どもたちに残せる環境だ。未来の地球環境を守るために事業規模でできること。クリーニング店のリブランディングからはじまる変革は、地球規模の変化のための小さいけれども大きな一歩だ。

「他社でも、サステナビリティをテーマに事業開発を検討される方がいらしたら、ぜひお声掛けいただきたいですね。一緒に進めていきたいです。」と、毛利さんは微笑む

Well-living
Rule
実践者たちの
マイルール

  • 楽しむこと
  • ワクワクしないことはやらない
  • それをやることで成長できるかを考える
  • 心理的安全性をちょっと超えた挑戦をする
  • まずは形にする

PROFILE

毛利明光さん Akimitsu Mouri
株式会社アルサホールディングス 執行役員/サステナビリティ推進室長

2017年株式会社アルサホールディングス入社。経営管理、新規事業などを担当し現職へ。現在は執行役員として、経営企画室とサステナビリティ推進室の室長を務める。クリーニング事業のリブランディングを手掛け、2021年10月福岡に、環境にも肌にも衣類にもやさしい自然派クリーニング『Solairo Cleaning Factory』を2店舗オープン。現在は4店舗まで拡張している。同店舗で展開する「段ボール製ワイシャツ用ハンガー」は、2023年グッドデザイン賞を受賞した。

取材・文/木崎ミドリ 撮影/神宮啓佑 編集/丸山央里絵

KEYWORD
  • #環境問題
  • #サーキュラーエコノミー
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